導入事例・コラムCOLUMN
次世代の競争優位性創出を実現する、ソリューション人材発掘・育成に向けて
~「共通性」×「多様性」を両立する人材可視化の取り組み~
SGホールディングス株式会社様では、次世代の競争優位性創出に向けて、グループ全体の人材の可視化・育成ツールとしてNMATをご活用いただいております。
今回は具体的な活用の内容とその取り組みの根幹にある大切にされている考え方について、人事部課長の河田晋輔様、係長の芳賀万里江様にお話を伺いました。
取り組みの背景・課題
物流業界の課題を、多様な人材を生かすことで解決したい
芳賀様 河田様
河田様:
私は大学卒業後、エネルギーインフラ、メディアや非鉄・素材などの業界で働いていました。それぞれの企業で、人事企画や人材育成などかなり幅広い領域の人事業務に携わっています。
さまざまな業界で人事に従事するなかで、物流業界に興味を持ったきっかけは「2024年問題」でした。国の未来を左右する重要課題にもかかわらず、物流業のことをそれほど知らないと気が付き、この業界に人事として貢献したいと思い、2022年に入社しました。
実際に入社すると、物流業界は企業規模が大小入り組んでおり、非常に競争が厳しいことを実感しました。だからこそ人を生かすことの影響も大きいのではないか、と感じています。
芳賀様:
私はSGホールディングスグループの事業会社で、デリバリー事業をメインに行うワールドサプライ社に2010年に新卒で入社しました。
当時の営業職の社員は男性が多く、新卒の女性社員は珍しい存在であったかもしれませんが、その環境で、営業職としてお客様のパフォーマンスを最大化することに注力してきました。
営業を進めるなかで、お客様の多くも物流業界に課題意識を持っていることに驚かされました。これだけ環境変化が激しい業界で今後の事業の活路を見出すには新しい発想が必要ですが、お客様もそこに対して非常に悩まれている。そんな状況を目の当たりにして、今新しい発想・提案が求められる物流業界では、多様な個人を生かすことが必要となるのではないか、そして自分自身の経験をそこで生かしたい、と考えるようになりました。
そこで2014年にグループ公募制度で人事部門に手を挙げ、ダイバーシティや女性活躍、LGBTなどのテーマを担当してきました。
これらは世間的には旬なテーマかもしれませんが、物流業界ならではの推進の難しさがあります。そのため、無理やり世間に合わせるのではなく、自分自身の営業経験を踏まえながらグループ全体に最適な形を模索していく「バランス」を大事にしています。
経営戦略を踏まえた人事戦略の企画・推進
私たちは、社員一人ひとりが持つ力を十分に発揮することが重要と考えており、個の力を引き出せるような人事施策を進めたい、という想いを持って人事業務に取り組んでいます。
また同時に、経営戦略の実現に向けて人事戦略を描き、人事施策を企画・実行していく、つまり、個の集まりである組織の力を引き出すことにも注力しています。いわゆる人的資本経営の取り組みです。
長期ビジョン「Grow the new Story. 新しい物流で、新しい社会を、共に育む。」では、これまでのデリバリー事業を柱としながら、「持続可能な成長を実現する次世代の競争優位性創出」をテーマに、デリバリー事業以外の事業を成長エンジンにしていくことを掲げています。
このような経営戦略の実現のためには、現在の活躍人材とは異なるタイプの人材も必要です。物流現場のオペレーションを綿密に組み立てて、お客様に価値提供を行う「オペレーション人材」が現在の活躍人材だとすると、お客様の課題に対して、新しい解決策を企画・提案していけるような「ソリューション人材」も必要になってきます。これまでの延長線上にはない多様な人材の発掘、育成や登用、そしてそのための基準も必要となる、と考えています。
そこで、まずはSGホールディングスグループ内に、どのような人材が存在しているのか、可視化が可能になるアセスメントツールを探すことにしました。
プロセス・実行施策
変化しにくい潜在能力にフォーカスできるアセスメント選び
これまでも経営知識に係るアセスメントなどの情報を管理し、人材強化や可視化につなげる取り組みを行ってきました。これらの「顕在化」した知識スキルの情報に「潜在的」な能力が把握できるアセスメントツールを組み合わせることで、より社員一人ひとりの多様な持ち味を把握できるようにしたいと考えました。
また、今回の取り組みには、グループ全体で共通した人材特性の言語化や、基準を設けるなどの目的もあります。そこで、グループ内で先行事例のあるNMATを活用することにしました。
本格導入前にトライアル的に実施したNMATデータを分析した結果、職種により人材特性の傾向が異なるなど、これまで人事が肌感覚として認知していたことが客観的なデータとして現れました。個々人の結果・全体傾向分析結果共に納得感があったので、今後、グループ共通で展開するための手応えを持つことができました。そして、SGホールディングスグループの管理職層の人材特性の可視化においては、NMATを活用することを決定いたしました。
自己の特性を客観視し、自己理解を促進
SGホールディングスとしてのNMAT導入は、2023年にスタートしました。初年度はM層と呼ばれる係長・課長クラスが受検対象となり、それ以降は新たに係長職に登用された方を中心に実施しています。
NMAT導入の主目的は、SGホールディングスグループの人材特性の可視化ですが、導入の決め手になったもう一つの理由が、本人にフィードバックできる報告書が出力でき、その内容が非常に分かりやすかったことです。「自分の特性」や「自分がどんな行動を取るべきか」などが一目で理解でき、本人が見ても十分活用できる手応えがありました。
社員が自身のキャリアを考える上でも活用できるよう、NMATの結果は本人にフィードバックしたうえでキャリア面談等での活用も推奨しています。
なおNMATフィードバックの際は「結果は良し悪しを記したものではなく、あくまで本人の説明書のようなもの」とアナウンスしているので、フラットに自分や相手を理解できる情報になっていると嬉しいですね。
説明会を通じて、グループ各社・ホールディングス全体での取り組みを促進
グループ全体でNMATを実施するとなると、当然実施目的への説明責任が求められます。
事前にNMATの有効性・活用イメージを丁寧に共有することと合わせて、グループ全体の目線合わせのために「NMATの利活用説明会」を実施しました。
グループ各社取締役から係長まで30名ほどの参加者に対して、施策全体・NMAT導入の背景、概要、事業会社の活用事例などを説明しました。
工夫したことは、昇進・昇格など比較的短期目線での活用場面と、データ分析などのアナリティクスとしての中長期目線での活用の両面を伝えるようにしたことです。
実際にデータ分析を行ううえでは、具体的なデータの取り扱い方や結果の読み方などイメージがわきづらい点もあるのではないかと考えたため、分析の仕方や活用事例を紹介し、リアリティが高まる情報提供を心がけました。
SGホールディングスとしては、グループ各社が抱える人事課題の解決のためにNMATを活用してほしいという想いと、グループ全体の人事課題に対して、グループ各社の人事とNMATを共通言語にして一緒に取り組みを進めていきたい、という想いがあります。
成果・今後の取り組み
多様な個を生かす、グループ横断のタレントマネジメントへ
今回の取り組みで、グループ共通のものさしを作る出発点に立てたと思います。
グループ全体で同じ基準を持てば、共通言語のもと「これまでとは違う、〇〇のような特徴を持った人材も登用してみては?」など地に足がついたコミュニケーションが取れることを期待しています。NMATは客観性のあるデータなので、すり合わせがスムーズになる・やり取りの透明性を上げるなどの効果があると考えています。
また今後はタレントマネジメントでの活用にも取り組みたいです。管理職登用から部長層のサクセッションプランまで、様々な人事施策において人事が把握する「人となり」の裏付けとして、NMATは重要なデータとなります。
そしてこれらのデータベースとなるようなグループ共通のタレントマネジメントシステムを整えていくことも進められたらと考えています。属人的な情報に加え、発令情報など人事が保有するデータを可視化できるような、人事基幹システムの構築は一つのテーマになるかと思います。タレントデータを適切に活用することで、より多様な個が活躍できる組織の醸成に繋げていきたいと考えています。
貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
SGホールディングス株式会社
- 設立
- 2006年3月
- 事業内容
- グループ経営戦略策定・管理並びにそれらに付帯する業務
- 社員数
- 93,403名(連結/ 2024年3月期)