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マネージャー・管理職になりたい人が少ない時代をどう乗り切るか ~管理職意向を踏まえた動機付けのヒント~

2023年09月05日 マネジメント/管理職とは 管理職登用

かつて、終身雇用が当たり前で、入社してから1社で勤め上げることが多かった時代には「管理職になる」ことを1つの目標としている方も少なくありませんでした。 

しかし働き方やキャリアの多様化が進む今、管理職を目指さないというキャリアビジョンを持つ人や、むしろ積極的に「管理職にならずに会社に貢献する」道を選ぶ人も増えているかもしれません。

 そのような状況であっても、多くの企業で管理職は組織成長を支える重要なポジションであることには変わりありません。人事やマネジメントは、管理職として活躍できそうな人を探し、管理職に就任させる必要が変わらずあるのです。

 今回は、管理職としての活躍可能性について「本人が希望しているのか」という指向面と、「本人に向いているのか」という適性面から考えてみます。

 具体的なケースもご紹介しますので、ぜひ自社の状況を思い浮かべながらお読みいただければと思います。

管理職になりたい人は減っている!?

多様な働き方やキャリアチェンジが当たり前になりつつある時代、昨今の若手層のキャリア観はどのようなものなのでしょうか。 

まことしやかに「管理職になりたいと考える若手社員が減っている」と囁かれる風潮がありますが、弊社が行った「新入社員意識調査2022」によると、意外な傾向も確認できました。 

「管理職になりたい」「どちらかと言えばなりたい」(計55.6%)が「なりたくない」「どちらかと言えばなりたくない(計12.8%)」を上回っているのです。 

図表1 Q:あなたは管理職(組織やグループを統括・運営する立場)にどれくらいなりたいですか?
(新入社員として入社する組織のなかに限りません)【n=525/単一選択】

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ただし、メディアなどで取り上げられる他の管理職への就任意向調査では、7~8割の正社員が「管理職になりたくない」と考えているなどのネガティブな結果が出ているのも事実です。 

仮に新入社員時代には管理職になることを前向きに捉えていたにもかかわらず、キャリアを積むにつれて意向が減っているのだとしたら、その理由は、管理職という仕事の魅力の伝え方に問題があるのかもしれません。

先の新入社員意識調査2022の「管理職になりたい理由」に着目してみましょう。

本項目の調査を開始した2020年以来、「自分が成長できるから」がトップ(65.4%)です。また「部下育成の醍醐味を味わえるから」(4.9ポイント増)が過去3年を比較し上昇傾向にありました。 一方、「高い目標を達成する喜びを手に入れられるから」(24.3%)は過去3年を比較し下降傾向(10.3ポイント減)にありました。

図表2 Q:管理職(組織やグループを統括・運営する立場)に
「なりたい」「どちらかと言えばなりたい」と回答した方にお聞きします。なりたい理由を選んでください。
【3つまでの複数選択/pt=ポイント】000393_003.jpg

かつてのように「管理職=会社という組織で権限が大きい人」という動機付けだけでは、若手層は管理職を目指そうとは思わないのです。むしろ「会議が増えて大変そうだ」や「仕事に対する責任が大きくなりそう」など煩わしさのある印象が強いのかもしれません。

 Z世代を中心とした今の若者に管理職の魅力を伝えるには、「会社のために」ではなく、「自分の成長のために」「部下が成長する喜びのために」働くことのやりがいを訴求することが重要になってくるとお分かりいただけるでしょう。

 参考:「新入社員意識調査2022

就任して初めて味わえる管理職の醍醐味

では、「管理職になりたい/なりたくない」との意向は、実際に管理職に就任した場合には、どのように変化するのでしょうか。就任前と就任後の管理職に対する捉え方の調査をもとに、示唆が得られそうなポイントを解説していきます。

意向・指向は変化するもの


管理職に「なりたい」「なりたくない」という考え方は、あくまで本人が抱く意向・指向です。

特に若手社員は管理職になったことはないので、いわば「想像上の管理職」に対しての自己申告となります。 管理職に限らずですが、自分が「やりたい」とは思っていなかった職種や役割に実際に就任し、やっていると、意外にも興味がわいた・やりがいを感じた経験がある方は多いのではないでしょうか。

弊社の「管理職意向の変化に関する実態調査」によると、管理職への就任前は「やりたくない」という意向を持っていた人が実際に管理職に就いたケースで、本人の管理職意向が前向きに変わった方は半数以上という結果になっています。

つまり、実際に管理職をやってみると、やりがいや醍醐味を感じている人が多いのです。

 図表3 昇進前後での管理職意向の変化

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具体的にポジティブな変化の理由を見てみると、実際に管理職になってみて、「権限や影響力の大きさ」や「現場の仕事とは違う面白さ」があり、「成長を感じられている」ことによって、気持ちがポジティブに変化していることが分かります。

図表4 ポジティブ変化の理由【複数回数/%】

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管理職として実際に動いてみて初めて、管理職ならではのやりがいを実感する方も少なくないようです。

指向がない理由は「自分には向いていない」から

一方、もともと管理職になりたくないと思っている理由を調査したところ、第1位が「自分には管理職は向いていないと思っていた」という回答でした。

 図表5 管理職になりたくなかった理由【複数回答/%】

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2位以降の項目には「報酬的面でのメリットが少ない」や「時間的な業務負荷が高い」など、労働条件面に対する意向が並んでいるだけに、理由の1位が本人の内面にあることは、やや意外な結果ともいえます。

 参考:「管理職意向の変化に関する実態調査」報告

 

管理職になりたがらないが、適性がある人を探すには?

「管理職になりたい人が少ない」と嘆いている人事部門の方は多いかと思いますが、現実問題、なりたくない人にはどのようにアプローチしたら良いのでしょうか。

そのヒントが前述の調査に隠れています。

管理職になりたくなかったが昇進後にポジティブに変化した人の、管理職就任前後の管理職意向を端的にまとめると、以下のような気持ちのメカニズムが見て取れます。 


  【就任前】

  ・「自分には向いていない(=適性がない)」
   だから「管理職にはなりたくない(=指向がない)」
      
  【就任後】
  ・「管理職はやりがいがある」



このメカニズムで注目したいのが「指向」と「適性」の組み合わせです。

前述の調査のように「指向」はあくまで本人の自己申告の感情であり、なおかつ管理職未経験のため、イメージで管理職の仕事を捉えていることもあります。一方、「適性」は本人の意向は関係なく、あくまで性格特性や仕事の進め方によって、管理職として活躍しやすいかどうかを見ています。

弊社の管理者適性検査NMAT(エヌマット)は、その「指向」と「適性」のバランスに着目して、総合的に管理職としての適性を導き出しています。

未経験の方の指向を、説得して変えるのは少々困難でしょう。前述の調査のように、実際に着任して行動や成果が伴って、指向は初めて変化する側面があるからです。 むしろ、管理職になりたくない要因の1位が「自分には向いていない」であることから、本人が気づいていない管理職としての適性にアプローチするのは一かもしれません。

管理職就任前後の動機付けのヒント ~ケーススタディ~

管理職としての指向がないメンバーに、具体的にどのようなアプローチをすればいいか分からないと頭を抱える方もいるのではないでしょうか。

 ここでは、弊社の顧客から実際にヒアリングしたケースをお伝えします。もし似たような課題を抱えている場合は、ぜひ部分的にでも参考にしてください。

エンジニアAさんのケース

【就任前】

アプリケーション開発を担当し、黙々とプログラミングを遂行していたAさん。リーダークラスになっても、後輩社員もいなかったことから、基本的に単独もしくはチームの一員として動くことが大半でした。

 上司から管理職意向を聞かれても「自分のペースで開発を進めたいから、プレイヤーでいたい」と答えていました。

【マネジメントの関与】

Aさんの上司が管理者適性検査NMATの結果を確認すると、やはりAさんはメンバーを束ねてマネジメントをする「組織管理タイプ」の指向の得点はあまり高くありませんでした。

しかし驚いたことに、適性面で見ると「組織管理タイプ」の得点が高かったのです。

人物コメントを読むと「周囲に働きかけて交際範囲を広げていく」や「目標達成にエネルギッシュ」など、普段のAさんの様子からは予測できない意外な人物像が浮かび上がってきました。

 再度Aさんと話をすると、「確かに社外のプロジェクトなどでは、自分から提案をすることが多いですね」など、リーダーシップを発揮しているケースが確認できました。「メンバーがいればもっとダイナミックな開発ができるかもしれませんね」と、Aさんもマネージャー就任に対して、まんざらではない考えに変わっていったのです。

【管理職就任後】

Aさんは就任直後には、マネジメントに対してやや自信がない様子でした。

しかし人事によるマネジメント基礎研修などを受講すると、手応えを感じたようで、自ら組織方針などのプレゼンテーション資料を作り始めました。

半年後のフォロー面談の際には、「メンバーと一緒に開発を進めるのは、なかなか思い通りにいかず、苦労もしています。でも、それ以上に自分とは違う強みを持ったメンバーたちと仕事を進めると、自分1人では叶わなかった開発案件も進められそうで、むしろワクワクしています」と、話していたそうです。

まとめ

「マネージャーをやりたい人がいない」と嘆いているだけでは、何の解決にもなりません。ただし意向や指向がない人に「管理職を希望してほしい」と、材料もないまま説得するのは至難の業です。

重要なのは「なぜやりたくないのか」を丁寧に紐解き、1人ひとりの特性や事情に合わせたアプローチを行うことです。 その際に、全国の管理職と比較した客観的な適性検査データがあることは、アプローチをするうえで心強さが増すでしょう。

いくら日々の業務での動きを熟知しているメンバーでも、本来の持ち味はなかなか見抜きにくいものといえます。 管理職として活躍できる人を埋もれさせるのは、本人のためにも会社の成長のためにも大きな機会損失です。隠れたポテンシャルを引き出すために、適性検査のデータを1つの材料としていただければ幸いです。

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