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「なぜあの人がマネージャーに?」に答えられる-客観指標があれば、昇進・昇格の説得力が増す-【後編】
「なぜあの人がマネージャーに?」に答えられる-客観指標があれば、昇進・昇格の説得力が増す-【前編】では、
昨今のマネージャーを取り巻く苦しい状況や登用後育成施策を行ってもうまくいかない理由、マネージャーの人材要件で起こりがちな問題についてお伝えをしました。現在、自社のマネージャーに求める要件があいまいという方は、適性検査を活用することも一手段でしょう。
後編では、適性検査があることで、昇進・昇格にどのような変化が生まれるのかを紹介します。
"名監督"に求められる要素をあらかじめ抽出
「活躍するマネージャー」の人材像は、もちろん企業によって異なります。
しかし、業界・企業規模を問わず、マネージャーとしてあまねく求められる資質もあるのです。「他者にアプローチしながら、求められる成果を上げる」というのは、マネジメントや監督に等しく求められる要件だからです。
そのヒントとなるのが、管理職に特化している適性検査です。例えば弊社の「管理者適性検査NMAT」は1969年の初版開発時に、あらゆる業種の68社・3565名のデータをもとにして、管理職に共通して求められる素養を抽出しました。その後も約1100社・27000名(2023年3月期)のデータをもとに、時代に即した「求められる管理職像」にチューニングをしてきました。
実際、NMATの尺度と現実の活躍度合いの関連性を認めている研究データもあります。
図表1 NMAT結果とその後の活躍状況の関係
追跡調査:2004年から2008年にNMATを受検した6社960名を対象とした調査。
企業様のご協力のもと、自社の現役管理職の昇進度合いを3段階(G・M・P)に区分していただき、NMATデータとの関連性を調べたところ、統計的な有意差が見られました(図表1)。
つまり、「NMATの得点が高い人の方が、現実に活躍する傾向がある」ということなのです。
過去の実績や上長からの推薦以外に、「科学的に活躍の可能性があるかどうか」を見える化する適性検査をものさしに加えると、納得感のある検討材料になるはずです。
後発的に鍛えにくいマネジメント資質を測定
もう1点、適性検査を使う意義は「周囲からは見えにくく、変わりにくい資質面」を測定していることです。
特に、後者の「変わりにくい資質面」は注目に値するポイントでしょう。
「対人面の姿勢として控え目か、社交的か」「判断のよりどころとして心情・気持ちを重んじやすいか、合理性を重んじやすいか」など、資質面は言わば利き腕がどちらかというような無意識の傾向で、個人の変わりにくい特徴であり持ち味であると言えるのです。
NMATでは、本人が企業組織の中で、どのような立場で貢献したいと考えているかを表す指向に加え、人の行動のベースとなる資質(基礎能力・性格特徴)を測定しているため、現在の仕事とは関連のない業務に対する適性の予測も可能となっています(図表2)。
図表2 NMATの測定領域
つまり、プレイヤーとしての行動には現れにくいマネジメント資質を確認したうえで、管理職登用を検討できることになります。 抜擢人事が実現するだけでなく、マネジメントを担わせると不全感を抱える人の登用も回避できる可能性があるのです。
実際に、適性検査を既に実施している企業の多くは「日頃の仕事ぶりからは判断しにくい能力・適性を把握する」ことを導入の理由に挙げています(図表3)。
図表3 適性検査を実施している理由は何ですか。あてはまるものをすべて選んでください。
2018年リクルートマネジメントソリューションズ調査
なおNMATでは過去の研究データから、4つの役職タイプ(組織管理タイプ・企画開発タイプ・実務推進タイプ・創造革新タイプ)を設定し、それぞれのタイプにおける向き不向きを判定していますマネージャーとして活躍できるかどうかだけでなく、どのような役職タイプとして力を発揮するかの予測ができるのです。
そのため、「自社の発展を考えると、今後はこの役職タイプを増やしたい」など、マネジメントのポートフォリオ管理にも活用できます。
マネージャーの活躍は会社の成長をも左右する
「マネージャーは重要なポジションだ」との言葉はよく聞くものの、自社の昇進・昇格基準を考え抜いて、言語化している企業は意外と少ないものです。その一因として、人材採用などと違って日頃から接して働きぶりも見ているため、昇進・昇格の判断はしやすいだろうという考え方があるのかもしれません。
ただ、プレイヤーとマネージャーでは求められる能力がまったく異なります。間違った登用をしてしまうと、本人の自信喪失、メンバーの成長鈍化、組織業績の低迷、ひいては会社全体の成長が失速するなど、影響ははかり知れません。
適性検査の活用は1つの手段ですが、「自社の昇進・昇格基準に胸を張れるか否か」を点検するきっかけにしていただければ幸いです。